「最近、顔のエラが張ってきた気がする」
「朝起きるとアゴが疲れている」
「無意識に歯を食いしばっているかも……」
そんな悩みを持つ人から注目されているのが、咬筋(こうきん)へのボトックス注射です。
ボトックスというと「シワを取る美容施術」というイメージが強いかもしれません。しかし実は、筋肉の働きを一時的に弱めるという特徴から、歯科領域でも「食いしばり」や「咬筋の過緊張」に関連して話題になることがあります。
では、実際にどのような仕組みで、どんな人に向いているのでしょうか?
そもそもボトックスとは?

ボトックスは、ボツリヌス毒素を利用した治療法の通称として広く知られています。
ボツリヌス毒素には、神経から筋肉へ伝わる信号を一時的に抑え、筋肉の過剰な収縮を弱める作用があります。
つまり、「筋肉をなくす」のではなく、「筋肉の働きを一時的に弱める」ものです。
そのため、咬筋に注射すると、強く噛みしめる力が弱まり、咬筋の発達によって目立っていたエラの張りが徐々に変化することがあります。
ここが、ボトックスによるエラ治療の面白いところです。
骨格そのものを削るのではなく、筋肉のボリュームにアプローチするからです。
エラが張っている原因は「骨」だけではない
「エラが張っている=骨格の問題」と思っていませんか?
実は、顔の輪郭には骨だけでなく、筋肉や脂肪なども大きく関係しています。
特に咬筋は、奥歯を強く噛みしめたときに盛り上がる筋肉です。
試しに、奥歯をグッと噛みしめて頬の後ろ側を触ってみてください。
硬く盛り上がる部分があれば、それが咬筋です。
日常的に食いしばる習慣がある人や、歯ぎしりが強い人では、この筋肉に繰り返し負荷がかかることで、咬筋が発達している場合があります。
そのため、同じ「エラ張り」でも原因によって適した方法は異なります。
| エラが目立つ主な原因 | 主な特徴 | ボトックスとの相性 |
|---|---|---|
| 咬筋の発達 | 噛みしめると筋肉が大きく盛り上がる | ◎ |
| 骨格 | 下顎の骨そのものが張っている | △ |
| 脂肪 | 頬・フェイスラインの脂肪が多い | △ |
| むくみ | 日によって輪郭が変わる | △ |
つまり、ボトックスは「どんなエラにも効く施術」ではありません。
まず、エラが何によって目立っているのかを見極めることが重要です。
食いしばりにも関係する?
咬筋ボトックスが注目されるもう一つの理由が「食いしばり」です。
食事をしていないとき、本来は上下の歯が常に接触している必要はありません。
ところが、仕事中に集中しているときや、緊張しているとき、睡眠中などに無意識に歯を食いしばってしまう人がいます。
強い食いしばりが続くと、歯や歯周組織だけでなく、咬筋や顎関節周辺にも負担がかかります。
咬筋へのボツリヌストキシン注射では、この筋肉の過剰な活動を抑えることを目的とします。
ただし、「食いしばりがある=ボトックスをすれば解決」というわけではありません。
歯ぎしり・食いしばりの原因には、睡眠、ストレス、噛み合わせ、生活習慣などさまざまな要因が関係するため、必要に応じてマウスピースなど別の治療法と組み合わせて考えることも大切です。
マウスピースとボトックス、何が違う?
食いしばり対策として比較されることが多いのが、マウスピースです。
大きな違いは「何を守るのか」です。
| 咬筋ボトックス | マウスピース | |
| 主なアプローチ | 筋肉の働きを弱める | 歯への負担を物理的に減らす |
| エラ張りへの影響 | 期待できる場合がある | 基本的に輪郭を変える目的ではない |
| 歯の保護 | 直接的ではない | ◎ |
| 食いしばりへのアプローチ | 筋肉側から | 歯・顎への負担軽減 |
| 効果 | 一時的 | 装着している間に効果を発揮 |
| 向いている人 | 咬筋の発達や過緊張が気になる人 | 歯を守りたい人など |
このため、両者は「どちらか一方」というより、目的によって使い分けるものと考えると分かりやすいでしょう。
効果はずっと続く?
ボトックスの効果は永久的なものではありません。
筋肉への作用が時間とともに弱くなるため、効果の感じ方には個人差があります。
また、エラの変化も注射直後に完成するわけではありません。
筋肉の活動が徐々に弱まり、それに伴って筋肉のボリュームも変化していくため、時間をかけて輪郭の変化を感じるケースがあります。
一方で、効果を維持するために何度も施術を繰り返す場合には、投与間隔や量などについて医師・歯科医師と十分に相談することが重要です。
「ボトックス=安全」と考えないことも大切
手軽なイメージがある一方、ボツリヌストキシン製剤は医薬品です。
注射する部位や量によっては、意図しない筋肉まで作用して、一時的な筋力低下などが生じる可能性があります。
また、咬筋を弱めすぎると「噛みにくい」「食べにくい」と感じることもあります。
そのため、「たくさん打てばより小顔になる」というものではありません。
大切なのは、顔の形や咬筋の状態、噛む機能などを確認したうえで、適切な量・部位を判断することです。
美容医療を受ける際も、効果だけではなくリスクやほかの選択肢について説明を受けてから判断することが重要です。
ボトックスは「小顔治療」だけではない
ボトックスという言葉から美容目的を想像する人は多いでしょう。
しかし、咬筋への施術を考える際には、「小顔になりたい」という見た目だけの問題として考えるのではなく、
「なぜ咬筋が発達しているのか」
「食いしばりがあるのか」
「歯や顎に負担がかかっていないか」
という視点が重要です。
特に、エラ張りと食いしばりの両方が気になっている人は、一度自分の咬筋を触って確認してみるのもよいでしょう。
噛みしめたときに頬の奥が大きく硬く盛り上がるなら、輪郭に咬筋が関係している可能性があります。
ただし、実際にボトックスが適しているかどうかは、筋肉だけでなく歯・顎関節・噛み合わせなども含めて判断する必要があります。
「エラを小さくしたい」だけでなく、「食いしばりが気になる」「朝起きると顎が疲れる」といった悩みがある方は、まず歯科医院で相談してみてはいかがでしょうか。
自分では気づいていなかった「噛みしめのクセ」が、口元やフェイスラインの悩みとつながっていることもあるかもしれません。
ボトックス治療を検討する際の注意点
ボトックス治療は、すべての方に同じような結果が得られるものではなく、効果や経過には個人差があります。また、体質や筋肉の状態によって適さない場合もあります。施術を検討する際は、事前に医師・歯科医師から十分な説明を受け、メリットだけでなくリスクや注意点も理解したうえで判断しましょう。
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